調査趣旨
昨年10月、広田町内外の交流の実態を把握し、今後のまちづくりに活かしていくため、また多くの方に知っていただくために「広田町内外の交流に関するアンケート調査報告書〜『交流』にはどんな価値があったのか?〜」を作成しました。
今回の「町内経済循環をうながす4つの試み ー地域内経済循環に対する取り組みと調査に関する報告書ー 」は、昨年の調査結果により明らかになった地域内経済循環の課題を解決するための4つの試みの概要と結果に関する報告書です。
研究メンバー
三井 俊介 NPO法人SET 理事長 廣瀬 太陽 NPO法人SET 研究部 調査員
アドバイザー
宮城大学事業構想学郡 准教授
日本NPO学会会長
石田祐
和歌山大学経済学部 教授
大澤 健
助成
「Yahoo!基金2020年度被災地復興調査助成」
調査報告書
大澤 健 教授のコメント
交流事業が社会資本に与える影響の調査に続いて、今回は社会資本が経済に与える影響を調査したものとなっています。コロナ感染拡大によって十分な調査環境が整わない中で、両者の関係についてポジティブな相関関係が得られる調査結果になっていることに大きな意味があると思います。
「経済」への影響については、域内経済循環と域外からの経済効果導入のふたつの領域に分けて調査が行われていますが、特に前者については有益な結果が得られています。地域内の生産者と消費者の交流は、モノを介した交流(地域内産品直売等)の次元でも行うこともできますが、それをさらに相互交流、相互理解、価値観の共有といった次元に深めることによってさらに域内経済循環を高めることができることが分かります。こうした調査結果は、今後の地域経済のあり方に重要な示唆を与えています。その意味で、今回の結果を地域の多くの方々でシェアすることが今後重要になります。
域外からの経済効果の導入については、現下の状況では積極的な展開ができなかったことは残念ですが、今後につながる結果は得られているのではないかと思います。これも生産者と域外の消費者をつなぐ方法として、社会資本を厚くしていることが有効であったという結果は、今後の地域産業の方向性を示していると言えます。地域産品のブランド化、顧客ロイヤルティの強化など、現在の競争力強化の戦略に適合した販売方法のさらなる開発につながっていくことを期待しています。こうした戦略はトライ&エラーの繰り返しによって形になっていくので、今回の調査結果をもとした、さらなる取り組みが求められます。
今回の調査は、生産者(販売者)と消費者(購入者)との間の相互作用が経済に与える影響について調査したものでしたが、今後調査してほしいのは生産者と生産者との社会資本が経済に及ぼす影響です。地域内の各事業者間の交流と知識循環によって、活発なイノベーションが起こることが期待されます。こうした知識の交流は、価値観の共有や、互いの信頼感にもとづく協働作業によって生み出されます。観光・交流を通じて、地域内の農業事業者・漁業事業者、食品製造、各種製造業、販売事業者などの多様な事業者がコラボ(協働)することがイノベーションの孵卵器になるかどうかは、調べるべき課題だと思います。
そうした点からすると、SETが今後地域内の多様なプレイヤーを結びつける触媒になることも期待されます。今回の調査からは、今後の方向性についてSETの事業の拡大という視点から構想されています。ただ、SETに外部の人材が多いことを考えると、そうした特性を活かして、媒体になることも期待されます。地域内の多様な事業者は、それぞれに内部的な組織をもっているために、連携が効果的にできない場合があります。そこに外部の人や組織がはいると、連携がスムーズに進みます。今回の調査結果を地域内でさらに広く知ってもらうことで、そうした可能性が広がります。そうした発展の方向も、今後ぜひ検討してください。
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